「NHK 超絶 凄ワザ!」の8重跳びなわとび製作で遭遇した7つの壁

今回、NHKの番組「超絶 凄ワザ!▽夢かなえますSP~なわとび8重跳び&安心!子ども用長靴」の中の「縄跳びパート」を担当しました。 製作チームのリーダーを任せていただいたのですが、その過程で遭遇した壁、課題とその解決方法についてお伝えしていきます。

 

テレビでは触れることのなかった箇所も含めて、網羅的に分析しています。

ちなみにこの8重跳びに挑戦する方は、森口さんという方で、いくつかのギネス記録を持っています。(参考リンク:http://morizo.main.jp/

7重跳びを跳べる人はまだ世界に一人しかおらず、それが森口さんです。https://youtu.be/t0eslfM-eMU

それでは早速、説明に入って行きます。

 

壁について

壁1:滞空時間と手の回転速度は7重跳びと同じ。

  • ものづくりの技術で問題を解決しなければならないので、身体的な部分は変わらない。

  • 問題点:手の回転速度が同じということは、ロープの回転速度を上げることも難しい。

 

壁2:トレードオフの問題

  • 例えば、回転時のスピードを上げるために摩擦を減らすと、初速(1回転目のスピード)がつきにくい。その他には、「重量⇄摩擦」「重量⇄空気抵抗」「ロープの長さ⇄跳びやすさ」がある。*後述で詳しく書きます。

  • 問題点:複数の事象でトレードオフの問題がでるため、どこにバランスの重心を置くかが重要となる。

 

壁3:そもそも、7重跳びの成功確率がかなり低い。

  • 森口さんは毎日2,3時間練習をしている。それにも関わらず、7重跳びの成功数は数回。

  • 問題点:5重跳び→6重跳びよりも、6重跳び→7重跳びの方が難しい。同様に、7重跳び→8重跳びのためには、かなりの飛躍が必要。つまり、8重跳びを跳べるようになるまでの距離がかなり遠い。

 

壁4:森口さんがメキシコにいる。

  • 森口さんが来日できる回数は、本番を合わせて2回。実質試せるのは一回のみ。

  • 問題点:数学者よりも生物学者の方が商品開発に向いている事例がある通り、何度も試して必要な部分を残し、無駄な部分を排除して行く方法が最も成功確率を高める。試す機会がないということは、仮説と検証ができず、仮説のみで進めなければならない。計算するにも、複合的な要素が多いため100%正しい結果を出せるかは不明。

 

壁5:「慣れ」によって成功確率がかなり変わる。

  • 7重跳びを跳べるかどうかは、「慣れ」による要素が大きい。

  • 問題点:大幅な形状変更がリスクとなる可能性を秘めている。実際に、新しく「凄ワザチーム」で作ったなわとびで練習してからは、今まで使っていた既製品での7重跳びが不可能になった。

 

壁6:「納期」がかなり厳しい

  • 今回のチームは、「ベアリング」「ロープ」「人間工学」のスペシャリストが揃ったチームだが、すべての方達と協力して製作する。組立作業のため、それぞれの部品を製作→送付→組立→送付といったやりとりが発生する。

  • 問題点:入手に時間のかかる部品や材料を取り扱うことが難しい。

 

壁7:テレビ的な「伝えやすさ」を求められる。

  • テレビ的にわかりやすくしたいので、複雑なことをできない。実際には複雑に複数の事象が絡み合っている。

  • 問題点:バランスをとった施作よりも、ゼロイチの施作を求められる。

 

行程

*黒の枠線で囲った部分はRAKUDOの担当箇所

 

 

全体構想設計(RAKUDO)

  • 使用ソフト:SOLIDWORKS

 

ベアリング設計製造(ミネベアミツミ)

  • ベアリング選定
  • ハウジング・セットカラー・スペーサー設計
  • 組み立て構想

 

ロープ設計製造(東京製鋼)

  • 構造決定
  • 材料選定
  • 製造

 

グリップ内部設計(RAKUDO)

  • 内部構造、精度設計、材質選定
  • 精密なベアリングが入るための精度や強度を保つための材質や、製造の実現可能性を見極める。

 

グリップ外部設計(名古屋市立大学)

  • 握る目的に応じた設計
  • 今回は、手にフィットすることで、できる限り安定しやすい形状にした。

 

グリップ外部詳細設計(RAKUDO)

  • 強度計算
  • 形状の調整
  • 力を入れたときに引っ掛かりがあるように微調整と、手のひらの根本部分にきれいにフィットするように直径を微調整した。STLデータをポリゴンサーフェイスデータに変換し、形状を微調整。その後、ソリッドデータに変換した。
  • 使用ソフト:SOLIDWORKS, Fusion360

 

グリップ製造(RAKUDO)

  • 3Dプリント造形
  • 後処理

 

3Dプリンターによる製造について

グリップに関して、機械設計(要件定義、形状決定、材質選定、強度設計)とCADデータ作成(ソリッドモデリング、ポリゴンサーフェイスモデリング、メッシュ変換)、3Dプリンターによる製造を行った。

光造形方式の3Dプリンターを使用した。内径にベアリングを保持するためのハウジングを挿入するため、0.001mmの精度が要求された。予算等の都合により切削では製造できない。

3Dプリンターでの材料膨張誤差を計算し、データに反映させたのち造形した。それにより、綺麗にハウジングが挿入できた。結構難しいことをやっているが、一発で簡単にできてしまったので、取り上げるほどの内容ではなくなってしまったと思われる。

 

壁への対処

  • まずは、要素を分類してみた。

 

ベアリング

  • 形状:強度(壊れにくさ)、摩擦(回転のしやすさ)
  • 構造:軸ブレ防止(個数と位置)
  • 保持器:ハウジング、セットカラー、スペーサー
  • *その他、配列、潤滑油、精度、寸法などがある。

 

ロープ

  • より方:硬さ(力の伝わりやすさ)、重さ(回転スピード)、太さ(空気抵抗)
  • 材料:硬さ(力の伝わりやすさ)、比重(回転スピード)

 

グリップ

  • 形状:握りやすさ、長さ(回転のしやすさ)
  • 材料:滑りにくさ、硬さ(力の伝わりやすさ)、強度(壊れにくさ)

 

次回後半で、壁への対処の詳細を書いていきます。